「素質のない子に金をかけてもMARCHすら入れないし、賢い子は金など大してかけなくても自分で勝手に伸びていく。やればできると思うのは親の欲目と受験業界に踊らされてるから。 蛙の子は蛙といわれるがとんびが鷹を産むこともあれば鷹が雀を産むこともある。 学力があるならあるなりに、ないならないなりにその子が幸せな人生を送れる途を示してあげるのが親の務め。金をかけるよりよほど価値がある。」
上記のようなXでの投稿を見かけました。
ごもっともなご意見だと思います。
特にやればできると思うのは親の欲目と受験業界に踊らされてる。
というところは、耳が痛い話です。
そうは言っても、自分の子どもということになるとなかなか客観的には見ることが出来ないものです。
しかし、遺伝的素質だけで結果が決まるわけではないというデータがあります。
素質のない子にお金をかけてもMARCHすら入れない?
反論してみることによってこのテーマを深く考えてみたいと思います。
出来ない子に教育投資が本当に無駄?
素質だけでなく、環境や努力の質が結果に影響を与えるということもあることは実証済みです。
自己管理が難しかったり晩成型の生徒には、外部のサポートが学力向上のきっかけになることがあります。
お金をかけるということは、モチベーションや学習習慣を形成する上で重要な役割を果たしています。
素質だけでなく、環境や努力の質が結果に影響を与えます。
日々、見違えるほど変わっていく生徒を、目の当たりにしています。
環境って本当に大事であり、その環境を整えてあげることが、お金をかける最大のメリットだと思っています。
「やればできる」は親の欲目や受験業界の策略?
努力を通じて能力が伸びると信じる子どもは、学業成績が向上しやすい(キャロル・ドゥエックの「成長マインドセット」理論)Kindle版は無料 ¥0円
「やればできる」という考えは、子どもに努力の価値を教えるポジティブなメッセージになります。
確かに受験業界の影響はあります。
しかし、適切な指導や学習計画のもとで努力すれば、ある一定程度は成果を上げられる子は多いということも事実です。
自己肯定感を下げるような指導方法をするような学習塾も存在するようなので、塾選びは慎重にしたいものです。
期待せずに可能性を信じる
これってすごく難しいことですが、これが出来ると親子関係も良好でいられます。
期待しすぎると裏切られた気持ちになったり、子どもを追い詰めてしまったりしてしまうと思うのです。
言うのは簡単ですが、自分の子どもということになると難しいですよね。
「蛙の子は蛙」「とんびが鷹を生む」の例外は限定的?
な、なんと
フィンランドやシンガポールのような教育システムでは、個々の子どもの能力に応じた指導が成果を上げており、遺伝的素質だけで結果が決まるわけではない。
Scarr-Rowe仮説というのがあります。
簡単に説明します。
高品質な教育環境は、遺伝的素質による学力差を縮小する。フィンランドの平等な教育システムは、この仮説を支持する結果を示しており、低SESや遺伝的ポテンシャルの低い生徒でも適切な指導で成果を上げられる
その他にも
ポリジェニック・スコア(PGS)研究があります。
遺伝的素質を測定するPGSを用いた研究(例:ノルウェー、米国)では、遺伝的影響は存在するが、学校の質やSESが高い環境ではその影響が緩和される。
フィンランドやシンガポールの学校は、こうした環境を提供しているそうです。
子どもの学力や能力には遺伝や家庭環境が大きく影響しますが、教育や環境の介入によってその影響をある程度変えられます。
とんびが鷹を生むような例外は稀ではありますが、適切な教育投資やサポートがあれば、子どもの潜在能力を最大限引き出せる可能性が高まるというのも事実です。
教育投資は学歴だけでなく、将来の選択肢を広げる
親の努めは、子どもの可能性を最大化してあげるということもあると思うのです。
子どもの幸せ、何が幸せなのか、時代や場所が変われば変化するかもしれないですし、将来の選択肢を広げるという意味でも教育投資は大切なものだと考えます。
MARCHに届かなくても、専門学校や他の進路で成功する基盤を築ける可能性があると思うのです。
OECDの調査では、教育投資を受けた子どもは、成人後の収入や社会的地位が高くなる傾向があるそうです。これは幸せの一つの要素となり得ますね。
結論
過度な投資やプレッシャーは逆効果ですが、教育投資をすることによって適切なサポートが可能になります。それは子どもの成長を促します。
お金をかけても無駄!と言い切ってしまうのはあまりにも酷だと思います。
子どもの個性に応じた柔軟なアプローチと適切なサポートのため、
フィンランドとシンガポールの教育システムは、個々の子どもの能力に応じた指導を通じて、遺伝的素質だけでは決まらない学力向上を実現しています。フィンランドは平等性と教師の自主性を、シンガポールはデータ駆動型のアプローチと早期介入を重視し、PISAや進学率などのデータでその効果が裏付けられています。遺伝的素質は学力に影響を与えるが(heritability 40~65%)、高品質な教育環境と個別指導がその影響を補完・強化し、幅広い生徒の成功を可能にしています。
参考)フィンランドとシンガポールの教育システムとPISAデータの出典
PISAデータ:
- OECD公式ウェブサイト(www.oecd.org/pisa)で「PISA 2022 Results」や過去のレポート(2000~2018年)を無料で閲覧可能。詳細なデータセットはOECDのデータポータル(data.oecd.org)で入手可。
- シンガポール教育省(www.moe.gov.sg)やフィンランド教育文化省(okm.fi)でも国別レポートが公開されている。
遺伝学研究:
- 上記の論文(Haworth et al., 2010; Plomin & Deary, 2015; Tucker-Drob & Bates, 2016; Lee et al., 2018)は、学术データベース(例:PubMed、Google Scholar、SpringerLink)でアクセス可能。一部の論文は機関アカウントや購入が必要な場合がありますが、要旨は無料で閲覧可。
- 例: PubMed(pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)で「heritability of academic achievement」を検索