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60歳からのピラティスは、鏡に映る『必死な自分』との格闘だった

「運動神経、置いてきた」60歳の私が、天井の鏡と格闘して半年が経った話

ヨガは初日で挫折し、スポーツジムの会費は「健康への寄付金」と化していた私ですが、どういうわけか「ピラティスミラー」だけは半年も続いています。

なぜかって? それはもう、切実に「体がマシになってきた」という実感があるからです。腰の悲鳴が小さくなり、丸まっていた背中が「あ、私、人間だった」と思い出したかのように伸びていく。無理のない範囲で、なんとかギリギリ、人間としての尊厳を保ちながら続けられているのです。

天井に映る、ありのままの私(と、お隣さん)

ピラティスミラーというのは、マシンを使った女性専用のピラティススタジオです。最大の特徴は、天井が鏡張りになっていること。

仰向けになると、そこには「必死な形相で手足を動かす自分」が映し出されます。「私の体、今どうなってるの?」という疑問が、鏡を見るだけで一発解決。筋肉のどこに効いているのか、骨盤がどっちを向いているのかが、嫌というほどよく分かります。

しかも、お隣さんの様子も鏡越しにチラ見できるので、「あ、私のこの動き、正解だわ」とか「あ、私だけカブトムシの裏側みたいになってる」といった答え合わせがスムーズにできるのです。

運動音痴、キャンペーンの波に乗る

普段の私は、運動習慣なんて言葉とは無縁の生活を送っています。たまにYouTubeを見ながら、申し訳程度にラジオ体操をするのが関の山。体力への不安は募るばかりですが、ジムに行く準備をするだけで知恵熱が出そうなタイプです。

そんな私がなぜ、還暦という人生の節目を過ぎてから始めたか。理由はシンプル、最寄り駅の近くで「めちゃくちゃお得なキャンペーン」の看板と目が合ってしまったからです。60歳からの手習い、なんて優雅なものではありません。「体験だけなら……」という軽い気持ちが、運の尽き(あるいは幸運の始まり)でした。

効果は絶大、でも心はガラス細工

公式HPには「姿勢改善」「柔軟性向上」「体幹強化」と輝かしい言葉が並んでいますが、私が一番恩恵を受けているのは「姿勢とバランス」です。

猫背のせいで腰痛、肩こり、膝痛のトリプルパンチを食らっていた私の体が、少しずつ整っていく。ピラティスに出会えて本当によかった!……と、心底思う一方で、私の心は時々ポッキリと折れそうになります。

そう、インストラクターさんという「人間関係」の壁です。

インストラクターさんという名のガチャ

鏡に映る他人の目が気になる自意識過剰な私にとって、インストラクターさんの言葉は時に鋭い矢となります。

プロフィールを拝見すれば、バレエ経験者、体育大卒、ダンスの達人……。眩しすぎる経歴の方々の中には、私のような「どんくさい人間」の生態が理解できない方もいらっしゃるようで。

(あぁ、今この人、『なんでこんな簡単なことができないの?』って思ってるな……)

という冷ややかな空気を感じ取ってしまうのです。具体例を挙げると身バレして私が社会的に死ぬので伏せますが、あの「見下されている感」を察知した瞬間の絶望感といったらありません。

もちろん、できない私を仏のような慈悲の心でサポートしてくれる、聖母のようなインストラクターさんもいらっしゃいます。まさに指導員ガチャ。このバラつき、なんとかなりませんかね。他店舗に逃げ出したい気持ちはやまやまですが、入会特典という名の鎖に縛られ、私は今日も同じ店舗の門を叩くのです。

お財布と準備には優しいけれど

料金は月6回で9,900円(キャンペーン価格)。1回30分という短時間勝負です。

何より素晴らしいのは、準備が「ほぼゼロ」なこと。シューズもいらない。Tシャツとスパッツで乗り込み、終わったらそのまま帰る。新しく買い揃えるのは滑り止めのソックスくらいです。この「面倒くさくない」という一点が、ズボラな私を支えています。

スマホとのにらめっこは続く

ただ、唯一の誤算は「予約が取れない」こと。

土日の午前中なんて、3週間先まで埋まっています。2回分しか予約できないシステムなので、1回消化して「さあ次!」と思った時には、もう土日の枠は絶滅しています。

キャンセル待ちを狙って、1時間前にスマホと睨み合い、空席が出た瞬間に指を滑らせる。平日の昼間に行ける自由の身なら苦労はしないのですが、現実はそう甘くありません。

それでも、私は歩き続ける

半年通って、私の体は確実に変わりました。歩くときに「あ、今、骨盤底筋使ってるわ」と意識するだけで、長年の悩みがふわりと消えていく感覚。

予約の取りにくさに悶絶し、インストラクターさんの態度に枕を濡らす夜もありますが、それでもこの「お手軽さ」と「効果」は捨てがたい。

願わくば、特典を維持したまま他店舗へ自由に遠征できたり、インストラクターさんを指名できたりする未来が来ますように。そう願いながら、私は今日も天井の鏡に映る「必死な自分」と向き合っています。

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